日本で確認されているカラスの主な種類は、ハシブトガラス、ハシボソガラス、ミヤマガラス、ワタリガラス、コクマルガラスの5種類です。とくにハシブトとハシボソは全国的に多く見られます。その他の種は地域や季節によって見られる頻度が異なります。観察の際は体格や鳴き声、行動パターンなどをチェックすると見分けやすくなります。
街中でよく見かけるカラスはどの種類ですか?都市部や住宅街で最もよく見かけるのは「ハシブトガラス」です。頭が大きく、くちばしが太く湾曲しているのが特徴で、人の生活圏に適応してゴミ置き場や公園によく出没します。一方、ハシボソガラスは郊外や農地など開けた場所を好む傾向があり、都市部での遭遇率は低めです。
ハシブトガラスとハシボソガラスの違いはどこにありますか?両者の違いは外見と行動にあります。ハシブトガラスはくちばしが太く、額が出ていて、街中や市街地を好みます。一方、ハシボソガラスはくちばしが細く、額はなだらかで、農耕地や河川敷など開けた環境を好みます。また、鳴き声にも差があり、ハシブトは「カー」と太く低く、ハシボソは「ガーガー」と濁った声で鳴きます。
街中や公園でよく見かける黒いカラスは、どれも同じに見えるかもしれませんが、実は種類によって鳴き声や体格、行動に違いがあります。そこで今回は、日本で見られる代表的なカラスの種類や特徴、見分け方を紹介します。 都市で暮らす身近な野鳥であるカラスの奥深い世界を、観察のポイントとともに紹介します。
日本でよく見かけるカラスの生態

カラスといえば、真っ黒な見た目が特徴です。しかし、黒い羽根をよく見てみると紫や緑、藍色など光沢のある色です。世界には約130種類のカラスが存在し、中には色鮮やかなカラスもいます。
カラスの繁殖期
カラスの繁殖期は3月~7月で、1回の産卵で3~5個の卵を産みます。卵は20日前後で孵化し約35日で巣立つといわれています。その後50~100日程度は家族で行動するともいわれています。
日本にいるカラスの種類
日本にいるカラス科の鳥はカケス、カササギ、ルリカケス、オナガ、ホシガラス、ミヤマガラス、コクマルガラス、ハシボソガラス、ワタリガラス、ハシブトガラスです。この中でもっともよく知られているのが以下の3種類です。
- ミヤマガラス
- ハシボソガラス
- ハシブトガラス
身近にいる3種類のカラスの生態や特徴について紹介します。
①ミヤマガラスの生態や特徴
ミヤマガラスは全身真っ黒でくちばしは細くとがっており、色は成長と共に灰白色になり幼鳥のときは黒色です。
ミヤマガラスのすみかは冬鳥として西日本を中心に渡来し、主に九州でよく見かけられます。近年は日本海沿に東へと範囲を広げて行動しています。市街地だけでなく農耕地や海岸、河原、林、山地などいたるところで見かけられるようになりました。特に農耕地など開けた場所を好みます。
ミヤマガラスの特徴
- 全長は47cm
- 体重は325~516g
- 3種類の中では最も大きく体重も重い
- ユーラシア大陸から渡来している
- 鳴き声はハシボソガラスとよく似ている
ミヤマガラスは繁殖しないのが特徴で一夫一妻制です。
②ハシボソガラスの生態や特徴
ハシボソガラスは全身黒色で、くちばしはハシブトガラスより細くて湾曲は少ないのが特徴です。日本全国に生息していますが、沖縄で見られることはまれです。ハシボソガラスは河川敷や農耕地など開けた場所を好みます。
ハシボソガラスの特徴
- 全長は50cm
- 体重は320~686g
- 農村部など緑が豊かな場所を好む
- 「ガーガー」「ガアァガアァ」と尖った声で鳴く
③ハシブトガラスの生態や特徴
全身黒色でくちばしは太く、上くちばしが大きく湾曲しているのが特徴です。額は盛り上がって丸みがあります。九官鳥に似て人間の声や、他の動物の声などをまねることもできます。
すみかは日本全国に存在しており、人家の近くでもよく見かけられます。ハシブトガラスは日本で最もよく見かけるカラスです。自然の中では果実や種子、昆虫などを食べますが、都市では種子や昆虫以外にもペットフードや人間が出す残飯や生ごみなども食べます。
ハシブトガラスの特徴
- 全長は56cm
- 体重は600~750g
- 緑が豊かな場所以外に都市部にも住んでいる
- 「カァカァ」と澄んだ声で鳴く
参考:環境省 別表 鳥獣リスト
参考:環境省 生態系被害防止外来種リスト | 日本の外来種対策 | 外来生物法
カラスの鳴き声については下記の記事で詳しく紹介しています。

ハシブトガラスとハシボソガラスの行動パターンの違い

カラスの行動にも種による傾向があり、それは住んでいる地域や食性に反映されています。行動からも、カラスの種類をある程度推測できます。
生息環境
- 【ハシブト】:都市部、公園、住宅地など人の多い場所
- 【ハシボソ】:農耕地、川沿い、工場地帯など郊外
餌の探し方
- 【ハシブト】:ゴミをあさる、人の食べ残しを拾う
- 【ハシボソ】:ミミズ、虫、小動物など自然のものを食べる
歩き方の違い
- 【ハシブト】:跳ねて移動
- 【ハシボソ】:スタスタと歩く
冬に見られるカラス科の珍しい種類

冬になると、日本には渡り鳥として珍しいカラスの仲間がやってきます。
コクマルガラス
- 小型で体長は30〜33cm。二色型(白黒)と全黒型が存在
- 集団で行動し、電線や田畑にとまっていることが多い
ワタリガラス
- 国内では極めて珍しく、北海道などで稀に観察される
ムクドリや鳩の撃退法については下記の記事で詳しく紹介しています。


初心者でも簡単にカラスを識別できるチェックポイント

以下のようなチェックポイントを活用することで、初心者でもカラスの種類を見分けられます。
見た目チェック
- 頭の形(盛り上がっているか)
- くちばしの太さと曲がり方
- 全体の大きさ
行動・声チェック
- 鳴き声の高さと濁り具合
- 歩き方(跳ねるか、交互に歩くか)
- 生息環境(都市or郊外)
簡単なメモと写真を活用すれば、散歩中でも判別可能です。
カラスによる被害を受けないための対策

カラスにとっては生きていくために当たり前のようにするゴミ荒らしは、私たち人間にとっては深刻な問題です。少しでも被害をなくすために、できることを考えていきましょう。
繁殖期は近寄らない
カラスの繁殖期は3~7月で、カラスの子育ては1ヶ月~1ヶ月半程度です。この時期のカラスは気が立っているため、むやみに近づかないようにしましょう。やむを得ず巣の近くを通る時は以下のことに気をつけましょう。
- 巣の中をあまり見ないでなるべく早く通り過ぎる
- 石を投げたり棒を振り回したりしない
- かばんや帽子などで頭を守る
一人一人が心掛ける
カラスにゴミを荒らされないように各自治体でも、さまざまな取り組みをされていますが、他人事と思わず一人一人が心掛けることが大切です。
- カラスのえさである生ごみを減らす
- 懐中電灯や鏡、ネットなどカラス除けグッズを使って追い払う
都心にカラスを増やさない
都心にカラスが増えた理由は先ほど紹介しましたが、できるだけカラスが増えないように対策しましょう。
- カラスや野生動物にえさをあげない
- 庭に果樹がある場合は実がなる前にネットをかける、実がなったらすぐに収穫する
- 庭木は生い茂る前に剪定し、カラスの巣作りの材料になるハンガーは外に置かない
【参考】
日本野鳥の会 都市におけるカラス問題
カラスの撃退方法については下記の記事で詳しく紹介しています。

カラス駆除・対策に困ったらプロへ依頼するのがおすすめ
今回は、日本で見られる代表的なカラスの種類や特徴、見分け方を紹介しました。カラスは私たちの身近にいる存在ですが、種類ごとに見た目や行動、鳴き声に明確な違いがあります。観察ポイントを押さえることで、都市や郊外で出会うカラスの種類を簡単に見分けることができ、自然との距離がぐっと縮まります。
一方で、カラスによるゴミ荒らしや巣作り被害に困るケースも少なくありません。そうしたトラブルには、無理に自分で対応せず、専門の駆除業者に相談することをおすすめします。
よくある質問
この記事に関するよくある質問
カラスの鳴き声で種類を見分けることはできますか?
冬季には、渡り鳥として「ミヤマガラス」や「コクマルガラス」が日本に飛来することがあります。特にコクマルガラスは黒と白のツートンカラーが特徴的で、群れで行動することが多いため識別しやすいです。主に西日本や関東以西の平野部で見られますが、観察には双眼鏡や図鑑があると便利です。
冬に見られる珍しいカラスの種類はありますか?
冬季には、渡り鳥として「ミヤマガラス」や「コクマルガラス」が日本に飛来することがあります。特にコクマルガラスは黒と白のツートンカラーが特徴的で、群れで行動することが多いため識別しやすいです。主に西日本や関東以西の平野部で見られますが、観察には双眼鏡や図鑑があると便利です。
見た目だけでカラスの種類を判断できますか?
外見の特徴からカラスの種類を見分けることは可能です。たとえばハシブトガラスは額が盛り上がり、くちばしが太く湾曲しています。一方、ハシボソガラスは額がなだらかで、くちばしも細く直線的です。ただし、光の加減や個体差もあるため、鳴き声や行動とあわせて観察するとより正確に識別できます。
カラスの歩き方や行動から種類はわかりますか?
カラスは歩き方や行動でも種類を見分けられます。ハシブトガラスは跳ねるように移動するのが特徴で、高い場所にとまる傾向があります。対してハシボソガラスは地面をトコトコと歩き、低所での採食を好む傾向があります。動き方の違いに着目することで、視認が難しい場合でも判断の手がかりになります。
カラスの大きさに種類ごとの差はありますか?
カラスの種類によって体の大きさには明確な違いがあります。ハシブトガラスは体長約56cmと大型で、ふっくらした印象を受けます。一方、ハシボソガラスは約50cmとやや小柄でスリムです。ミヤマガラスやコクマルガラスはさらに小さく、群れで行動する傾向もあります。体格と行動をセットで観察すると識別精度が上がります。
日本にいないカラスの種類も存在しますか?
日本以外にも多数のカラスの種類が存在します。世界には約40種以上のカラスが確認されており、たとえばアメリカにはアメリカガラス、オーストラリアにはトリサシガラスなどが生息しています。地域ごとに生態や鳴き声、見た目が異なり、日本のカラスとは異なる特徴を持つ種が多く存在します。
カラスの種類ごとに人への危険性は異なりますか?
カラスの種類による危険性の差は限定的ですが、行動圏や習性によって人との接触リスクに差が出ます。とくにハシブトガラスは都市部に多く、人の食べ物を狙ったり巣の近くで威嚇することがあります。一方、ハシボソガラスは警戒心が強く、人を避ける傾向があります。繁殖期にはどの種類でも威嚇行動が見られるため、距離を保つことが重要です。