両親が住む実家に年末に帰省したら「ゴミ屋敷になってた…」と悩む人が増えています。ゴミ屋敷が引き起こす問題は、衛生面だけでなく心や健康面にまで影響を及ぼすこともあります。高齢化社会を迎えた日本では、現実として起きるリスクが高いです。
ゴミ屋敷が引き起こす深刻な問題とは?
害虫や糞尿による悪臭や衛生状態の悪化
まず大きな問題として悪臭や害虫の発生など近隣住民への被害です。大量のゴミが虫のエサとなり、さらにそれらの虫をエサとするネズミなどが集まりゴミだけでなくネズミなどのフンによる悪臭も発生します。食べた後の生ごみなどを放置し続けるとネズミやゴキブリ、ハエ、ダニが集まりやすくなります。大量のゴミが原因で洗面台やお風呂が埋もれて使えず、自分の体も清潔でない状態が続きます。
火災や湿気カビなどによる家の劣化
ゴミ屋敷は放火などに遭う可能性も高く、何かのきっかけで一度火災が発生してしまうとゴミの中には危険物などが含まれている可能性もあり、通常の火災よりも大きな被害が出てしまいます。家中がゴミで埋め尽くされた状態が続くと湿気がたまりやすく、家中にカビが発生しやすくなります。特に床は湿気の逃げ場がなくなるためフローリングや畳が腐ることもあります。
マンションやアパートなど賃貸の場合は退去やごみの撤去、さらに劣化した床や壁の修繕費を請求されるので注意が必要です。持ち家の場合もリフォーム費用がかかります。ゴミ屋敷を長きにわたり放置すればするほど引っ越し代やごみの撤去代、部屋の修繕費と多額のお金が必要となります。
心と体の健康状態の悪化
大量のゴミのせいで窓を開けられず換気できなかったり、長年片付けもせずお風呂にも入らないという不衛生な環境にいると病気になりやすくなります。ダニやほこりを吸い過ぎるとくしゃみ、鼻づまり、じんましん、皮膚の赤みや腫れなどのアレルギー症状が出ることもあります。
ゴミ屋敷になってしまう原因は単にだらしないだけでなくうつ病や統合失調症などの病気でゴミを片付けができない場合や、認知症で判断能力が低下している場合など精神的なことが影響している場合が多くあります。専門家に相談し、適切な治療が必要になります。
ストレスが原因でゴミ屋敷になる
・ブラック企業で長時間労働している
・休みがとれない勤務環境のため、休日に片付ける気力がわかない
・仕事で責任あるポストにいるため、自分の家の管理までできない
ゴミ屋敷化してしまう人の中には、社会的地位の高い人が多いと言われています。
歴史上最初にゴミ屋敷が社会問題となった事例であるアメリカのコリヤー兄弟の場合は、兄が法律家、弟が技師兼ピアニストという社会的地位の高い職業の人達でした。1909年頃から引きこもるようになったコリヤー兄弟の家を、1947年に警察が強制捜査したところ、約120トンもの量にのぼるゴミが出てきたそうです。
ストレスを買物で発散する買物依存症のために物がたまってしまい、ゴミ屋敷になってしまったというケースもあります。今は100円ショップなどで安価にさまざまな物が買える時代です。インターネットで家にいながらショッピングもできます。こうした環境は便利で暮らしやすい反面、必要以上に物を買ってしまい、家のなかが物であふれてしまう原因にもなっています。
精神疾患が原因でゴミ屋敷になる
強迫性ホーディング
強迫性障害の一つである強迫性ホーディングは、異常行動の一つとして収集癖があり、物をため込んでしまいます。
ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHD(注意欠陥多動性障害)という発達障害は注意力が欠けていたり、一つのことに集中できない障害です。そのため手順よく片付けられません。その結果的、家の中が散らかったまま片付きません。
総合失調症
総合失調症は、昔は精神分裂症と言われていました。あちこちに気が向いてしまい、一つのことを続けられないという疾患です。片付けをしていてもすぐに他のことに気が向いてしまい、最後まで掃除や片付けをやり遂げられません。
うつ病
うつ病はストレスなどにより無気力状態になる精神疾患です。総合失調症とうつ病の違いは総合失調症が思考の病気、うつ病が気分の病気だと言われています。うつ病になると家の片付けをする気力がわかずゴミ屋敷化してしまいます。
認知症
認知症は記憶力が低下する病気です。どこに何をしまえばいいのか分からなくなったり、掃除や片付ける手順そのものを忘れてしまいます。
セルフネグレクト
医学的には精神疾患ではありませんが、セルフネグレクトもゴミ屋敷の原因となる症状です。セルフネグレクトとは直訳すると「自分を拒否する」「自分を放棄する」という意味です。大切な人が亡くなったことなどがきっかけで生きていく気力をなくしてしまい、食事や入浴など、生活する最低限のことをする気力がなくなってしまいます。