花後の4〜6月が最適です。遅くとも9月までに行い、病気なら冬でも実施し室温20℃前後で保湿します。胡蝶蘭は寒さに弱く、暖かく湿度の高い時期が回復しやすいためです。
胡蝶蘭はどのくらいの頻度で植え替えるべきですか?目安は2〜3年ごとです。水苔やバークの劣化で水はけが悪化したり、根が黒ずむなどのサインが出たら実施します。
植え替え直後の水やりはどうすればよいですか?最初の1週間は水やりを控えます。その後は完全に乾いてから週1〜2回、鉢底から流れるまで与え、受け皿の水は必ず捨てます。
葉が元気なのに花が続かないと感じたら、それは植え替えのサインかもしれません。胡蝶蘭は2〜3年ごとの植え替えが理想で、花が終わった4〜6月がベストシーズンです。
そこで今回は胡蝶蘭の植え替え方法やその後のケア、水苔とバークの選び方を紹介します。胡蝶蘭を健やかに育て、再び花を咲かせるためのポイントが分かります。
胡蝶蘭の植え替えが必要な理由は?

胡蝶蘭(コチョウラン)は、東南アジアやオーストラリアの熱帯地域を原産とするラン科の植物で、美しい蝶のような花を咲かせることからその名が付けられています。
胡蝶蘭は、優雅で華やかな花姿と、比較的長い期間花が楽しめることから、贈り物やインテリアに非常に人気があります。開店祝い、結婚式、入学式などの祝い事で贈られることが多く、縁起が良い花とされています。
胡蝶蘭は温暖で湿潤な環境を好み、日陰で風通しの良い場所で育てることがポイントです。花は1ヶ月以上咲き続けることが多く、室内でも比較的手入れがしやすい植物です。
胡蝶蘭を植え替える必要性
胡蝶蘭の植え替えは、美しい花を咲かせ、根や葉を健康に育てるために必要な作業です。
①根腐れや病気を防ぐ
胡蝶蘭は過湿が苦手で、根が黒く腐ってしまうことがあります。定期的に植え替えすることで、根に新鮮な空気を触れさせることができ、根腐れや病気を防ぐことに繋がります。
②適切な植え込み材に替える
贈答用の胡蝶蘭は、化粧鉢に植えられ根元に飾り苔が張られていることがあります。とても見た目が良い状態ですが、胡蝶蘭にとっては風通しが悪い状態です。花が咲き終わったら、適切な植え込み材に植え替えて、次の開花に備えましょう。
③古くなった水苔やバークを替える
胡蝶蘭は環境を整えて育てれば、10年以上長持ちする植物です。しかし、胡蝶蘭の根が張る水苔やバークは長持ちしないため2~3年に1度は替える必要があります。水苔が硬くなり水はけが悪くなったり、バークのボリュームがなくなったりしたら植え替えしましょう。
胡蝶蘭を植え替える時期

胡蝶蘭を植え替えるなら、春がベストシーズンです。ただし、植え替えのタイミングを間違えると、株が弱ってしまうこともあるので注意しましょう。
胡蝶蘭の植え替えに最適な時期
胡蝶蘭の植え替えは、花が咲き終わった4~6月頃に行いましょう。胡蝶蘭は寒さが苦手のため、寒い時期に植え替えすると弱ってしまいます。暖かく湿度の高い時期に植え替えすれば、株の負担を軽くでき、生育がよくなります。
遅くても9月までに
贈答用の胡蝶蘭は、温室で開花時期を調整されているため、6月までに咲き終わらないことがあります。10月以降になると気温が下がり、根が回復できないかもしれません。咲いている花を切り花にして、遅くても9月までに植え替えるようにしましょう。
病気の場合は冬でも植え替える
胡蝶蘭が病気になっている場合は、冬でも植え替えしましょう。春を待たずに傷んでいる根を切り落とした方がいいです。植え替え後は、室温を20℃前後に保ち、ビニール袋をかぶせて保湿します。
胡蝶蘭を植え替える方法

胡蝶蘭を植え替える際は、次のものを用意しましょう。根を傷つけないようにピンセットや割り箸があると便利です。
基本の胡蝶蘭の植え替え手順
準備物
- 園芸用のハサミ
- 植え込み材
- 鉢
- ピンセットや割り箸
- 軍手
- ビニール袋
園芸用のハサミはウイルスの感染防止のために刃の裏表をライターであぶって消毒しておきましょう。
胡蝶蘭の植え替え手順
- 胡蝶蘭の株を鉢から優しく取り出す。
- 根を傷つけないように、ピンセットを使って、根に絡みついている水苔やバークを取り除く。
- クリーム色や薄緑色をした元気な根を残して、黒っぽく変色した傷んだ根をハサミで切り落とす。
- 水苔を使用して植え替える場合は、霧吹きで水苔に水をかけてフカフカ状に戻し根の周りに水苔を多めに巻きつけ鉢に押し込む。鉢をひっくり返しても株が落ちてこなければ完了。
- バークを使用して植え替える場合は、鉢底ネットを敷き、穴からバークが零れ落ちないようにします。鉢にバークを少量入れたら、鉢の中心に胡蝶蘭の株を入れます。鉢の縁から1cm下までバークを詰めたら完了。
観葉植物の植え替えについては下記の記事で詳しく紹介しています。
二本立ち・三本立ちの支柱と処理

贈答株の二本立ち・三本立ちは、支柱とクリップを外してから植え替えます。花後に行い、スパイクは節上で切り戻して株の回復を優先します。
支柱を外すタイミング
- 花が終わってから外す
- 作業日は風の弱い日・直射を避けた午前中が無難
スパイク(花茎)の切り戻し
- 【体力温存重視】:基部から全カット(次シーズンに備える)
- 【再花狙い】:第2〜3節上でカット(ただし株が充実している前提)
支柱・クリップの外し方
手順
- 片手で花茎を支えつつ、もう一方でクリップを外す
- 支柱を鉢底方向へ少し回しながら引き抜く
- 花茎を鉢フチに軽く沿わせ、ぐらつかない位置で固定する
- 切り戻し→切り口を乾かす
【参考】
コチョウラン品種'満天紅'における植え込み培土の違いが生育 CiNii
【洋蘭】胡蝶蘭の植え替え手順動画
時間のある方は、以下の動画で手順をわかりやすく確認できます。
胡蝶蘭の植え替えは開花中にしていい?

開花中の胡蝶蘭の植え替えは、基本的に避けるべきです。花に多くのエネルギーが注がれているため、この時期に根を傷めると株が急激に弱ってしまいます。
ただし、病害の発生や用土の腐敗が深刻な場合に限り、例外的に植え替えを行います。その際は、花茎(スパイク)を節の上で切り戻してから、応急処置として実施します。
- 【資源配分】:開花中は同化産物の優先配分が花側にあり、根の再生資源が不足しやすい
- 【管理の両立不可】:植え替え後は断水・乾燥寄りの管理が必要だが、これは開花維持と相性が悪い
- 【ストレス増大】:根の物理損傷+環境変化が重なると、花落ち・葉のしわの引き金になる
例外OKの判断基準
以下の症状が見られる場合は、株の延命を最優先し、花茎(スパイク)を切り戻したうえで植え替えを行います。
- 鉢を外すと、水苔が黒くドロッと崩れる、または異臭がする
- 根の大半が褐変している、もしくは空洞化している
- 鉢内が常に過湿状態で、カビや藻が広範囲に発生している
どうしても今やる場合の手順
手順
- 第一節の上でカットします。株の回復を最優先する場合は、根本から花茎を全て切り取る
- 古い水苔またはバークを7〜8割程度だけ取り除きます。完全に剥がすと健康な根への負担が大きくなるため避ける
- 一回り大きな鉢を用意し、新しい用材で浅植えにします。株元の通気性を最優先に確保する
- 植え替え直後は断水し、明るい日陰で微風を当てながらしっかり固定する。株が揺れると発根不良の原因になる
- 2週目以降の管理は完全に乾いてから霧吹きを中心に加湿し、株の状態を見ながら軽い潅水へと移行する
胡蝶蘭の植え替えトラブル対策|根腐れ・葉しわ・カビの直し方

迷ったときは、「胡蝶蘭は花よりも株の回復が大事」と覚えておきましょう。
開花中なら無理に植え替えず、花茎を切って古い水苔を少しだけ取り替え、明るい日陰で静かに休ませてあげます。
| 症状 | よくある原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 根が黒く柔らかい/異臭 | 過湿・古い用材・通気不足 | 腐敗根を消毒ハサミで除去。新しい水苔やバークで浅植えし断水 |
| 葉がしわしわ | 根機能低下/給水不足 | 根傷がある場合は断水継続し蒸散を抑えるため日陰へ |
| 株がぐらつく | 支え不足/植え込み浅すぎ | 割り箸や支柱で仮固定。株元は動かさない |
| カビ・藻の発生 | 常時湿潤/光条件の偏り | 表層用材を交換し通気アップ。鉢外側も清掃 |
| 葉先が黄〜褐色 | 乾燥ダメージ/肥料焼け | ダメージ部は基本切らない(拡大時のみ最小限切除)。無肥料で様子見 |
胡蝶蘭の植え込みに使う水苔とバークの違い

胡蝶蘭の植え込み材には、ラン専用の水苔かバークを使用するのが一般的です。どちらにもメリットとデメリットがあるため管理しやすい方を選びましょう。
水苔の特徴
水苔は、湿地帯に生育するコケの一種で、乾燥・圧縮されて流通している植え込み材です。水苔を根の周りに巻きつけて、通気性の高い素焼きの鉢に植えます。保水力が高く、忙しくて水やりを忘れてしまう方におすすめです。
バークの特徴
バークは、松の樹皮を細かく砕いてチップ状にしたものです。バークは通気性が良く、根がしっかりと空気に触れやすい環境を作り出すため、胡蝶蘭にとって理想的な培地です。また、余分な水分をしっかりと排出し、水はけが良いという特長もあります。これにより、根腐れを防ぎつつ、胡蝶蘭が自然の状態に近い形で育てられます。
通気性がいいため、プラスチック製の鉢を使用し湿度を保つようにしましょう。
| 植え込み材 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 水苔 | 通気性と保湿性が高い 水やりの頻度が少なくてすむ 柔らかく根を傷つけにくい |
カビが発生しやすい 腐りやすい 植え替えにコツが必要 |
| バーク | 植え替えが簡単 通気性がよい 根腐れしにくい |
水はけが良すぎる 灌水が多くなる 害虫が発生しやすい |
植え替え後の胡蝶蘭の管理方法

胡蝶蘭の植え替えは、株に負担を与える作業です。失敗すると枯れてしまうため、植え替え後の管理方法を紹介します。
水やりの頻度と方法
植え替え直後の1週間は、水やりを控えるのが一般的です。植え替え時に根が傷ついている可能性があり、過剰な水分が根腐れの原因になるからです。
根が湿っていると、調子の悪い根と健康な根を見分けられません。調子の悪い根は、茶色くカサカサに枯れています。健康的な根は、白色や緑色をしており太く硬いのが特徴です。根が完全に乾いたのを確認してから週に1〜2回程度、水を与えます。鉢の底から水が流れるくらいしっかりと与えます。ただし、受け皿に溜まった水は必ず捨てましょう。
植え替え後の光の管理
胡蝶蘭は明るい日陰を好む植物ですが、植え替え直後は根が安定していないため、強い直射日光を避けましょう。植え替え直後の数週間は直射日光を避け、柔らかい間接光が当たる場所に置きます。徐々に日光に慣れさせながら、半日陰の場所で育てるといいでしょう。光が弱すぎると花付きが悪くなるため、適度な光量を維持することがポイントです。
施肥(肥料)のタイミングと種類
植え替え後すぐには肥料を与えないようにしましょう。根がしっかりと環境に順応した頃を見計らって施肥を開始します。施肥を開始するのは植え替え後1〜2ヶ月後が目安です。
肥料の種類としては、ラン専用の液体肥料がおすすめです。肥料は薄めたものを使い、10日に1回程度の頻度で与えると良いでしょう。肥料の与えすぎは根を傷める原因になるので、少なめに調整することが大切です。
植え替え直後に気をつけるべき病害虫のリスク
植え替え直後は根が弱っているため、病害虫に対する抵抗力が低くなっています。注意すべき病害虫はハダニやアブラムシ、湿度が高すぎるとカビや菌が発生するリスクが高まります。
自分で植え替えするのが面倒なら業者に依頼しよう
今回は胡蝶蘭の植え替え方法やその後のケア、水苔とバークの選び方を紹介しました。胡蝶蘭の植え替えは、古い用材を外し傷んだ根を清潔に整理し、通気と保水のバランスを意識して新しい水苔またはバークに収め、明るい日陰で安定させるのが基本です。乾燥と水やりのリズムを整えれば回復は早まります。
胡蝶蘭の植え替えは時期が重要です。株の状態判断に迷う場合や高価な個体、株分けを伴う作業はリスクが高いため、無理をせず信頼できる事業者に依頼してください。
よくある質問
この記事に関するよくある質問
胡蝶蘭の植え替えが必要なサインは何ですか?
根が黒ずむ・用材が硬化する・水はけが悪い・鉢底から根が出るなどがサインです。通気性と保水性が落ちると根腐れやカビのリスクが上がるため、花後の好適期に新しい水苔やバークへ替えると安定します。
水苔とバークはどちらを選べば良いですか?
保水重視なら水苔、通気・排水重視ならバークです。水苔は素焼き鉢と相性が良く、忙しくても水切れしにくい一方、過湿やカビに注意。バークはプラスチック鉢で湿度を保つ運用が向き、根腐れの抑制に有利です。
植え替え前に道具の消毒は必要ですか?
必要です。ハサミなどの刃物はウイルスや菌の伝播源になり得ます。ライター等で刃をあぶるなど簡便な消毒を行い、清潔な状態で黒変根を切除してください。衛生管理は株の寿命延長と故障リスク回避に直結します。
冬でも植え替えた方が良いケースはありますか?
病気や根腐れが進行している場合は冬でも実施します。室温20℃前後を維持し、保湿管理でストレスを抑えるのが要点です。回復力が落ちる時期のため、直射日光は避け、風の当たらない環境で静養させます。
植え替え直後の置き場所と光管理はどうすべきですか?
明るい日陰に置き、直射日光は避けます。根が安定するまで数週間は温度変化と乾燥風を避け、間接光で光合成を維持。光量不足は花付き低下につながるため、徐々に半日陰へ慣らすステップが有効です。
肥料はいつから与えれば良いですか?
植え替え後1〜2か月後から薄めたラン用液体肥料を開始します。早期の施肥は傷んだ根を刺激し逆効果です。10日に1回程度から試し、葉色や生育を見て濃度と頻度を調整し、過剰施肥による故障を避けます。
鉢とサイズはどう選べば良いですか?
根鉢より一回り大きい鉢を選び、素材は用材に合わせます。水苔は通気性の高い素焼き鉢、バークは湿度保持しやすいプラスチック鉢が無難。過大鉢は乾きにくく根腐れの原因になるため避けましょう。
植え替え後の水やり頻度はどう決めますか?
初週は断水し、その後は完全乾燥を確認して週1〜2回が目安です。鉢底から流れるまで与え、受け皿の水は必ず捨てて排水性を確保。温度・湿度・風通しで蒸散量が変わるため、季節に応じて調整します。
病害虫対策は何に注意すべきですか?
過湿を避け通気を確保し、葉裏や用材表面を定期点検します。ハダニやアブラムシは乾燥や弱った株で増えやすく、根の損傷と過肥も誘因です。衛生的な水やりと風通しの管理が、長期の予防と省力化に効きます。
株分けはいつ、どのように行うべきですか?
花後の生育期に根の充実を確認して実施します。黒変根を除去し、健全根を十分残すのが前提。切り口は清潔に管理し、通気性の高い用材へ収めて養生します。判断に迷う場合は専門家へ相談が安全です。

